いい加減にしてくれっ!
胸中で叫び、美鶴はギュッと唇を閉じた。
なんなんだっ あの二人はっ! こっちの気も知らないでっ!
目の前にはいない二人の少年を、交互に睨みつける。
瑠駆真のヤツっ なんだっていきなりあんなコトっ!
聡も聡だっ 最近は全然来なかったのに、よりによってあんなところにっ!
後から後から怒りが湧き上がり、一向に治まる気配はない。
駅舎を飛び出し、公園を走りぬける時、少女とすれ違った。
聡の義妹の緩だ。
一年年下の彼女は、一年生ではそれなりに幅を利かせているらしい。中学から唐渓に通っていたため、校風というモノにも馴染んでいるのだろう。
聡にチラッと聞いた話では、同級生よりもむしろ、上級生に仲の良い生徒が多いらしい。生徒会長とも親しいとか。
それに、やたらと気の強い性格なのかもしれない。
今さっきすれ違った時も、ヤケに剣呑な眼つきで睨んできていた。だが、今の美鶴には、それに構うほどの余裕はない。
そう、それどころではないっ!
聡に瑠駆真―――――
だいたい私は、そのどちらをも相手にするつもりはない。
そうだっ! 私は別に、どちらも相手にするつもりはないんだっ!
じゃあなぜ、そう言わない?
頭の片隅で、誰かが問う。
なぜ、はっきりと二人に言わないんだ?
それはっ―――
ギリリと歯軋りする美鶴に、更に問う。
お前は、寂しいんじゃないのか?
―――――っ!
息が切れ、速度が落ちる。駆け足は早歩きになり、さらに歩調が鈍る。
二人に言い寄られて、うれしいんじゃないのか?
―――っ! そんなことはっ
ひょっとしたら、お前はどちらかが好きなんじゃないのかっ?
違うっ!
目を見開き、息を吸う。
本当に?
嘲るように問うてくる声。美鶴は思わず片手を上げた。
「違うっ!」
かろうじて残っていた理性が、必死に声を落させる。だが勢いまで削ぐことはできず、擦れ声が叫びとなる。
本当に、どちらも好きじゃないの?
「ちがっ………」
目の前に、さらりと長髪が流れる。その少し薄い茶色の髪の向こうで、ほっそりとした長身の男性が笑った。
――――っ!!
なぜ今、霞流さんを思い出すのだ――――?
驚愕する美鶴の背後から、ゆったりとした、しかしどことなく棘のある声。
「意外と智恵はありますのね」
「少々姑息とも思えますけど」
思わず振り返った先に、見慣れた制服と知らない少女たち。
いや、三人のうち、一人は見たことがある。
記憶を辿り、指を唇に当てる。
確か、涼木…… と言ったはずだ。
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