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【アラベスク】  第3章 盲目Knight



第3節 Crazy or Crazy [5]




 いい加減にしてくれっ!

 胸中で叫び、美鶴はギュッと唇を閉じた。
 なんなんだっ あの二人はっ! こっちの気も知らないでっ!
 目の前にはいない二人の少年を、交互に睨みつける。
 瑠駆真のヤツっ なんだっていきなりあんなコトっ!
 聡も聡だっ 最近は全然来なかったのに、よりによってあんなところにっ!
 後から後から怒りが湧き上がり、一向に治まる気配はない。
 駅舎を飛び出し、公園を走りぬける時、少女とすれ違った。
 聡の義妹の(ゆら)だ。
 一年年下の彼女は、一年生ではそれなりに幅を利かせているらしい。中学から唐渓に通っていたため、校風というモノにも馴染んでいるのだろう。
 聡にチラッと聞いた話では、同級生よりもむしろ、上級生に仲の良い生徒が多いらしい。生徒会長とも親しいとか。
 それに、やたらと気の強い性格なのかもしれない。
 今さっきすれ違った時も、ヤケに剣呑な眼つきで睨んできていた。だが、今の美鶴には、それに構うほどの余裕はない。
 そう、それどころではないっ!

 聡に瑠駆真―――――

 だいたい私は、そのどちらをも相手にするつもりはない。
 そうだっ! 私は別に、どちらも相手にするつもりはないんだっ!
 じゃあなぜ、そう言わない?
 頭の片隅で、誰かが問う。
 なぜ、はっきりと二人に言わないんだ?
 それはっ―――
 ギリリと歯軋りする美鶴に、更に問う。
 お前は、寂しいんじゃないのか?
 ―――――っ!
 息が切れ、速度が落ちる。駆け足は早歩きになり、さらに歩調が鈍る。
 二人に言い寄られて、うれしいんじゃないのか?
 ―――っ! そんなことはっ
 ひょっとしたら、お前はどちらかが好きなんじゃないのかっ?
 違うっ!
 目を見開き、息を吸う。
 本当に?
 嘲るように問うてくる声。美鶴は思わず片手を上げた。
「違うっ!」
 かろうじて残っていた理性が、必死に声を落させる。だが勢いまで削ぐことはできず、擦れ声が叫びとなる。
 本当に、どちらも好きじゃないの?
「ちがっ………」
 目の前に、さらりと長髪が流れる。その少し薄い茶色の髪の向こうで、ほっそりとした長身の男性が笑った。
 ――――っ!!


 なぜ今、霞流(かすばた)さんを思い出すのだ――――?


 驚愕する美鶴の背後から、ゆったりとした、しかしどことなく棘のある声。
「意外と智恵はありますのね」
「少々姑息(こそく)とも思えますけど」
 思わず振り返った先に、見慣れた制服と知らない少女たち。
 いや、三人のうち、一人は見たことがある。
 記憶を辿り、指を唇に当てる。
 確か、涼木(すずき)…… と言ったはずだ。







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